「上田薫とリアルな絵画」 茨城県近代美術館
◆ この展覧会について
ABOUT THIS EXHIBITION
上田薫(1928~)は、日本におけるスーパーリアリズムの第一人者として広く知られる画家です。
1970年代に発表した「なま玉子」シリーズをはじめ、スプーンですくいとられたアイスクリームや、シャボン玉、水の流れといった、身近なものの一瞬の姿をとらえてリアルに表現する作品によって、高く評価されてきました。
上田は、写真を利用して対象をクローズアップで描くことにより、肉眼による認識をはるかに凌ぐ視覚世界を現出させます。
そしてその作品は、見る者の知覚に揺さぶりをかけ、リアルをめぐる思索へと私たちを誘うのです。
また上田は、1985~93年にかけて茨城大学教授を務め、茨城を制作拠点とした本県ゆかりの画家でもあります。
本展では、上田の仕事を代表的なシリーズによって振り返るとともに、現代の作家によるリアルな絵画表現をあわせて紹介します。
光がものを照らし出す複雑な様相や、人物表現における精神性や同時代性、見る者の意表を突くふしぎな世界など、彼らは各々の関心に基づいて、独自のリアリティを追究しています。
半世紀を超える上田の表現の軌跡をたどることは、現代のアートシーンで隆盛する様々な作家たちのリアルな表現について考える上でも、重要な意味を持つことでしょう。
多彩な作品を通して、「リアル」をめぐる豊かな絵画表現の世界をお楽しみください。
出品作家・作品数
作品数:56点(うち上田薫は35点)
出品作家:上田薫
三尾公三、金昌烈(キム・チャンヨル)、高松次郎、野田弘志、石井精一、木下晋、柳田昭、片小田栄治、磯江毅、大畑稔浩、伊庭靖子、田邉光則、諏訪敦、橋爪彩(さい)、山本大貴(ひろき)、横山奈美、松川朋奈、橋本大輔(生年順)全19名
「上田薫とリアルな絵画」
茨城県近代美術館
https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/6049
会期:2021年10月26日(火)~2021年12月12日(日)
開館時間:9:30~17:00
◆ 「リアリズムに潜むリアル上田薫の芸術の美しさと面白さ」
茨城県近代美術館「上田薫とリアルな絵画」
展覧会レポート2021/11/25
https://www.artagenda.jp/feature/news/20211125
◆ 企画展「上田薫とリアルな絵画」のご案内
茨城県近代美術館 The Museum of Modern Art, Ibaraki
上田薫(1928〜)は、殻から落ちるなま玉子やシャボン玉、水の流れといった身近なものの姿をリアルに描き出すことで知られます。
本展では上田の仕事を代表的なシリーズによって振り返るとともに、現代の作家による作品を交えてリアルな絵画表現の豊かな世界を紹介します。
◆ 展覧会構成と見どころ
序章:上田薫―玉子にみるリアル
まず会場で目に入るのは、上田薫の「玉子」シリーズです。
殻から落ちるなま玉子に加えて、スプーンですくい取られたり、フライドエッグになったりと玉子の見せる様々な姿が、大画面にクローズアップで描かれます。
身近にあるものの一瞬の姿をリアルに描くという上田芸術のエッセンスが凝縮された「玉子」は、私たちの目を惹きつけてやみません。
1章:いろんなリアル
対象を本物そっくりに描くリアルな絵画は、迫真的な表現を共通項としつつも、モチーフの選択や構成あるいは演出に画家の独自性が表われます。
1章では、現代の画家たちによる多様なリアルの世界を紹介します。
果物が散らばるテーブルと、そこにのっている女性たちが描かれた橋爪彩の「Girls Start the Riot」は、西洋絵画の静物画などの伝統を踏まえつつ、謎めいた雰囲気で見る者の視線を惹きつけます。
一方、山本大貴の「Standing Figure (feat. IKEUCHI Hiroto)」は、アニメやSF、プラモデルなどサブカルの要素を取り入れて、現代的な女性像のあり方を追い求めた一点です。
また絵画は、リアルな描写を駆使して本当はありえない虚構の世界を生み出すこともできます。
本章の最後では、無数の水滴が一面に並ぶ様相や人や物の影のみが描かれた絵画など、見る者の意表を突く「ふしぎなリアル」ともいえる作品に注目します。
2章:光のリアル
上田は光の反射や透過を描き出すことに注力していますが、それは、「ものを描く」ことが「ものを照らし出す光のありようを表現する」ことでもあるからです。
2章では、現代の様々な作家たちによる光の表現に注目します。
クッションの布地が拡散する柔らかな光、逆光下の鮮烈な陰影、建物に差し込む硬質な光など、光が生み出す効果は千差万別です。
クローズアップされた染付磁器とその表面の反射光を描いた伊庭靖子の「Untitled」は、その艶やかな光が見る者の目を捉えて離しません。
3章:上田薫のリアル
展覧会の最終章では、上田薫の作品世界を代表的なシリーズによってたどります。
初期の上田は、靴やバラなど静的なモチーフを描いていましたが、スプーンから垂れるアイスクリームを描いた作品を端緒に、流動的なものを描くことに取りかかります。
写真を用いてものの一瞬の姿を写しとる上田のスタイルは、この頃に確立しました。
その試みは、微細な泡を存在感たっぷりに描く「あわ」シリーズへと展開していきます。
茨城で活動した時期の上田は、北茨城に取材し川の水流を描いた「流れ」シリーズで、初めて屋外にモチーフを求めるなど、制作上の転機も迎えました。
その後、上田は「Sky」シリーズで、空の光景というこれまでにない壮大なスケールの対象を描くことに挑戦しました。
そして、近年は一転して再び身近なモチーフに目を向け、野菜や果物が目にも鮮やかな「サラダ」シリーズをはじめ意欲作を発表しています。
本章では、様々なシリーズを通してものの姿をリアルに表現する上田の作品世界をお楽しみください。
◆ 一瞬の姿リアルに表現 上田薫展が開幕【いばキラニュース】R3.10.27
ニュースチャンネル|いばキラTV 2021/10/27
◆ 一瞬の姿リアルに表現 上田薫展が開幕
茨城新聞動画ニュース 2021/10/26
水戸市千波町の県近代美術館で10月26日、企画展「上田薫とリアルな絵画」が開幕しました。本県ゆかりの画家で、身近な対象の一瞬を、肉眼をしのぐよう緻密に表現する上田薫さん(1928年~)の作品を中心に、スーパーリアリズムの世界が楽しめます。
上田さんが手掛けるのは、写真を利用して対象をクローズアップで描く手法。本物と見分けがつかないようなリアルな描写が特徴。会場には、現代の作家らの作品と合わせた56点を展示しました。1985年から93年まで茨城大学教授を務めた上田さんと、本県とをつなぐ作品も含まれています。
代名詞の「玉子」シリーズは、殻から黄身と白身が落下する瞬間や、スプーンですくい取る様子が描かれ、スプーンに写り込む景色まで再現されました。食べ物以外でも、県内の川の水流を描いた「流れ」、近作の「サラダ」シリーズなど、元気をテーマにした意欲作も並びます。
このほか光に照らされた様相や人物表現、リアルと虚構など、現代の画家たちによる多様な「リアル」を紹介。同館学芸員の乾健一さんは「多様な作品を並べた珍しい機会。豊かな絵画表現を楽しんでほしい」と話しました。
◆ 画家・上田薫と茨城大学 ― 卒業生・田邉光則さんが語る恩師の姿
https://www.ibaraki.ac.jp/news/2021/12/03011440.html
現在、茨城県近代美術館で開かれている「上田薫とリアルな絵画」展。玉子を割った瞬間を捉えたリアルな絵画で知られる上田薫さん(1928年~)は、かつて茨城大学教育学部の教員も務めていました。同展では、その当時の教え子で同じく画家の田邉光則さんの作品も展示されています。その田邉さんに上田先生との思い出を語っていただきました。